靖子の十八番は、
「赤いスイートピー」だった。
太郎は、彼女がなぜその曲を歌うのか…
その理由を知らなかった。
靖子は太郎の「女慣れ」していない誘い方を
苦々しく思っていた。
太郎に悪気がないのは十分にわかっていたのだが、
もう少しスマートに誘って欲しいと思っていた。
「You are all that I want」
なんて、バカじゃないかしら。外国人じゃあるまいし。
彼女は太郎が自分に言ってきたコトバを
思い出していた。
靖子は「赤いスイートピー」
を、歌った。